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Conducta ビヘイビア

キューバ映画 (2014)

キューバ映画なので大きな映画祭ではないが、33の賞にノミネートされ21の賞を勝ち取った名作。キューバといえば、フィデル・カストロ(1926-2016)による1959年のキューバ革命で、アメリカに極めて近い場所に親ソ連の共産主義国家となり、1962年のキューバ危機を生んだことで知られている。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の南北アメリカ局長 José Miguel Vivanco は 「同地域の他の国々が独裁政権から脱してゆくなか、フィデル・カストロ前議長のキューバだけが、事実上すべての市民的および政治的権利を抑圧し続けた。前議長は過酷な支配と反体制派に対する厳しい処罰を駆使して、何十年も抑圧的な体制を維持してきた」と指摘している。そして、2016年のHRWの「キューバ:フィデル・カストロ前議長 弾圧の歴史」という記事では、「抑圧は法によって成文化され、治安部隊、民間の親政府団体、政権から独立していない司法機関によって現実化した。 このような人権侵害がキューバに恐怖の風土を広く根づかせ、基本的権利の行使を妨げた。そして、国家批判をなえさせる一方で、国家への忠誠を誓うよう人びとに圧力をかけた」とも書かれている。この映画の中の主人公チャラに対し、権力を笠に着た、経験不足で無能で思い込んだら方針を一切変えない女性官僚ラケルが、その典型。チャラが好きになるイェニも、父がキューバ島の東部出身と言うだけで、意味もないのに、「パレスチナ人」と呼ばれて差別を受け、結局、出身地に強制送還されるのも、その典型。それにもかかわらず、この映画の真の主役の小学教師カルメラ〔60歳を超えた老教師〕は、そうした権力をもろともせずに戦い、最後には引退に追い込まれるが、自分の後継者を育て、体制にも屈しない他の教え子も育てている〔カルメラ役の名女優Alina Rodríguezは、映画公開の翌年に63歳で死去した〕。そこに、将来への明るい兆しが見える場面で映画は終わっている。しかし、キューバの現状は、日本以上の通貨の下落と、高度のインフレのため、映画の公開された2014年より悪化している。2023年の3月のNHKのニュースナビには、「去年1年間でキューバの若者たち30万人〔総人口の3%〕がアメリカを目指して次々と島を脱出した」と書かれている。もう少し後(2023年10月)の、アメリカのラジオネットワークNPRには、「2022年には記録的な数のキューバ人が国外に亡命し、今年すでに20万人以上のキューバ人が米国に亡命」となっている。映画は、キューバ国民に勇気を与える強い刺激にはならなかったようだ。チャラが実在の人物だったら、イェニと一緒にアメリカに脱出したかもしれない。なお、この映画は、カリテ・ファンタスティック! シネマコレクション2016で上映された。

重度のアルコール依存症で、働くことなど何もしない母親の代わりに、闘犬の犬の世話をしたお金で母子2人の生活費をまかなっている小学校5年生のチャラ。その独立独歩の生き方は、小学校の中でも、周辺の生活圏でも問題を起こし、ソーシャルワーカーや地元の警察官とも顔なじみ。そこから上がってくる一方的な報告が校長のファイルに集まって行く。チャラが4年生の時から担任となって教えてきた超ベテラン教師のカルメラは、チャラの中に、“本質的な善” を見い出し、どのような揉め事があっても常にチャラを庇ってきた。しかし、校長の資料が、行政のその部門の担当者ラケル…高慢で、基礎知識に欠け、思い込んだら一歩も譲らない若い女性の手に渡ると、チャラを行動更生学校に移すよう校長に圧力をかけてくる。カルメラは、全力でそれを阻止しようとするが、老齢のカルメラが心臓発作で入院している間に、チャラは悪意の塊のような6年生の黒人の生徒ノノとの争いに巻き込まれ、それがダメ押しとなって行動更生学校に転校させられる。しかし、教師として復帰してきたカルメラは、チャラがいないことに気付くと、行動更生学校の校長〔教え子〕に掛け合ってチャラを連れ出し、自分のクラスに入れる。ラケルは、その行為を、自分の権威に挑戦する思い上がりの越権行為だと強く反発し、何が何でもチャラを行動更生学校に戻そうとするが、それが上手くいかないと、今度は、カルメラを引退に追い込んでしまう。映画は、カルメラが引退の時に述べる “思い” を語らせることで、この教師の素晴らしさと、ラケルの愚かさを浮き彫りにする。なお、この映画のスペイン語字幕は理解不能な部分が多く、英語字幕は内容とズレている部分が多かったので、翻訳は困難を極めた。

チャラ役は アルマンド・バルデス・フレイレ(Armando Valdés Freire)。2000年1月3日生まれ〔撮影時12歳、小学校6年生〕、出演した映画はこれ1本だけ、ハバナ国際ニューラテンアメリカ映画祭で、主演男優賞を受賞した。「EcuRed」というサイトには、アルマンドについて詳しい紹介がされていて、「屋上でのYuliet Cruz〔母役〕とのシーンはとても難しかったです。あと、ブイ〔水泳の練習が大変だったとか 〕や鉄道〔コイン潰し〕のシーンも。岸壁から飛び込んだり、一人で湾を渡ったりするとは思ってもいませんでした。救助の人たちは近くにいけど、それほど近くではなかったので。それに、闘犬を見るなんて想像もしていませんでした。特に最後の戦闘シーンで死んでしまう犬には愛着が湧きました」など、いろいろなインタビューが掲載されている。

あらすじ

映画は、ハバナの街に住むチャラが、アパートの屋上に立って、飼っている鳩を飛ばしている場面から始まる。鳩を鳥籠に戻したチャラは、手製の木の梯子で屋上から最上階の廃墟化した部屋のベランダで飼っている闘犬用のスルタン〔薄茶、一番強い〕に水をやり(1枚目の写真)、次いで、数メートル先に繋いである1匹〔黒〕と、その先の1匹〔黒〕に水をやる。そして、下の歩行者用道路を見下ろすと、担任の老教師を見つけたので、「カルメラ!」と呼びかける。教師は、時計を見て、急いで降りて来るよう手で指示する。チャラは教師に向かって手を振ると、旧式の鉄製のエレベーターシャフトを囲むように設けられた階段を駆け降り、自分のアパートに入るなり、小さなキッチンのイスに置いておいた布バッグを肩から掛けると、部屋を出て再び階段へ。すると、夜をどこかのバーで過ごした重度のアルコール依存症の役立たずの母と鉢合わせする(2枚目の写真、母はフラついているので階段の手すりを持っている。その左がエレベーターのシャフト)。チャラは、「キッチンにコーヒーあるよ」とだけ言うと、そのままアパートから出て行く〔彼の部屋は2階?〕。チャラは、カルメラに走り寄ると、頬にキスし〔母には何もしなかった〕、カルメラもチャラの頬にキスする。そのあとで、カルメラが 「お早う」と声をかけ、チャラも 「お早う」と応じる(3枚目の写真)。

学校のクラスになって最初のシーンは、カルメラが、先ほどの服装とは全く違う服装で話し始める。これは、この映画の最後の方で、彼女が強制的に退職させられる時に、自らタイプで打った文を読み上げる場面(1枚目の写真)。映画の中で、大きく3回に分かれて挿入されるが、第1回目がここ。「これは初めて書いたものです。幾つかの点ではもっとよく考えるべきだったかもしれませんが、これが私の感じたことです」「私の祖母は奴隷の孫娘で、私が教員免許を見せた日には、信じようとしませんでした。祖母は、聖母マリア像の下の箱に5ペソを入れました」「あの時から50年、私はほとんどの時間をこの教室で過ごしてきました。私が最初にこの黒板に字を書いた時、皆さんどなたもまだ生まれていなかったと思います」。現実の教室の中では、友達にもなっていないチャラとイェニが互いにチラチラと見ている(2・3枚目の写真)。授業の終わりに、カルメラは、一人称で書く自由課題の作文を宿題として出し、それに対し、チャラは、「先生、一人称って、僕のことですよね?」と質問する。「一人称はこんな感じね。『僕はチャラ。仕事が多くて、ちょっとイタズラ好きだから、カルメラの前を通り過ぎちゃう』」。生徒達は喜んで笑う。教室から出ると、チャラはさっそく面白いことをしようと、「SEXTO*A〔6年A〕」という文字を1つ抜き、「SEXO*A〔セックスA〕」に替える。

チャラは2人の仲間〔右端がヨアン〕と一緒に学校から出て行くと、少し先に出たイェニとその友達〔左がパウラ〕に向かって、チャラが 「イェニ!」と声をかける。2人が振り向くと、チャラがイェニに向かってキスを飛ばす(1枚目の写真)。それに対する、“何の興味もない” というイェニの顔(2枚目の写真)を見た黒人の仲間リチャードは、「何てバカな子たち」と、イェニの代わりに物真似をしてみせ、チャラを冷やかす。

アパートに戻ったチャラは、何一つ母親としての義務を果たさないソーニャに、自分で作った夕食を渡す。ソーニャからは、感謝の言葉はゼロで、代わりに、「これ以上、学校と揉めたくないって言わなかった?」と非難される(1枚目の写真)。「出かける前に食べたら?」。「話を逸らすんじゃないよ、このクソが!」。「僕のせいはないよ。あのソーシャルワーカーは、僕を行動更生学校〔escuela de conducta〕に入れるって脅すんだ」https://diariodecuba.com/ には、「最も深刻な問題を抱えた子どもたちに適用される措置は、教育省の行動更生学校への紹介である」と書かれている〕。「あいつらは、いつだって同じよ」。チャラは、お札を数えて、「これは電気代だけど、子供には払えないんだ」と、ソーニャが払うべきだと言う。「そこで、お金を?」。「僕の犬、スルタン。勝ちっ放しさ」。ソーニャが、チャラの作った食事に手をつけずに出かけようとするので、「何も食べないの?」と訊くと、「あんたのせいで、食欲がなくなった」と言い、お金を持って出て行こうとする。チャラは、せっかくのお金が酒代にならないよう、「そのお金は電気代だからね」と再度注意する(2枚目の写真)。

役立たずのソーニャがいなくなると、チャラはさっそくスルタンの様子を見に闘犬場にこっそり見に行く。スルタンの世話をしてくれるイグナシオが、今日も勝利したスルタンをチャラに返し、賭けで儲けた金もチャラに渡してくれる(1枚目の写真、矢印)〔ソーニャは働かずに浪費するだけなので、家計を支えているのはチャラの闘犬での勝利金のみ〕。真面目なイグナシオは、チャラがそのお金の一部を使って別の犬に賭けようとすると、子供がそんなことをしてはいけないと強く断り、スルタンを散歩させるよう忠告する。チャラは仲間2人と一緒にスルタンにご褒美を食べさせ(2枚目の写真、矢印)、散歩に連れて行く。イェニとパウラは教会での合唱練習に参加した後で、2人だけで仲良く帰る。イェニは市場で手伝っている父親に会いに行き、父は荷台付きの三輪自転車の荷台にイェニを乗せて住処に向かう。倉庫の一部のような住処は、高架鉄道のすぐ横にあり、騒音と振動が凄まじい(3枚目の写真、矢印)。

チャラが屋上の鳩にところにいると、ヨアンが、「チャラ、ソーシャルワーカーが来てるぞ」と注意しに来る。それを聞いたチャラは急いで様子を見に行く(1枚目の写真)。アパートの部屋の前では、ソーニャと警官が言い合っている。「ソーニャ、いつまで続ける気だ? もう千回は警告したぞ! あの子の生きざまは動物そのものだ! ノーマ、何とかしろよ」。ソーニャは、ノーシャルワーカーのノーマと一緒にいなくなる。そこに、チャラが出て行き、警官に 「ノーシャルワーカーに、ほっといてと言ってよ」と頼む(2枚目の写真)。警官は、「母さんに相談しろ。結果に困るのは君なんだから」と何もしてくれない。次の場面は学校の校長室。校長のメルセデスがソーニャに、「ソーシャルワーカーからの報告はこれが最初じゃありませんよ。このすべてが、学校でのチャラの記録に残ることも知ってるでしょう?」と言いながら書類を渡す(3枚目の写真)〔右端に立っているのがチャラ、その左がダメ母のソーニャ、その左が担任のカルメラ、その左が最悪の女性(共産主義国家らしく能力もないのに地位に頼って威張り腐るだけの能無し女)で市の児童福祉課の職員ラケル、その左が融和主義の校長メルセデス〕。ソーニャは、その紙にサインするが、それが何を意味するのかは分からない。ソーニャは、サインした紙を校長に返しながら、「校長、あんたさんがこんな紙書いてる間に、あたしはチャラを育てるために懸命に働いてるのよ」と文句を並べる〔働いてなどいない〕。それを聞いたラケルは、「『懸命に働く』ってどういう意味?」と、嘲るように訊く。「そんなこと、あんたに言う必要あんの?」。校長は、その失礼な口調に、「ソーニャ、ラケルは、こうした問題をフォローする市の児童福祉の専門家なのよ」と注意し…

カルメラは、チャラに外で待っているよう頼む。それを聞いたチャラは、最初にカルメラを(1枚目の写真)、そのあとラケルと校長を睨み部屋から出て行く。カルメラは、愚かなだけのソーニャに、署名する前に紙を読んだのか尋ねるが、当然、ソーニャは読みもしていない。そこで、カルメラは、「2人〔ラケルと校長〕は、チャラをしばらく家から離そうとしてるのよ」と注意喚起する。それを受けて、ラケルは 「あなたの問題〔アルコール依存症〕解決に必要なサポートは提供するから」と言う。「あたしの『問題』?」。「何の話か、ちゃんと分かってるくせに。あんたがそれを受け入れない限り、チャラが困ることになるのよ」。「あたしとあんたって知り合い? 違うわよね。なら、校長とカルメラがいたって、あんたに答えるつもりなんかないからね」。そう吐き捨てるように言うと、ソーニャは乱暴に立ち上がり(2枚目の写真)、さっさと部屋から出て行く。ソーニャがいなくなると、校長は、さっきカルメラがソーニャに言った件で、「チャラをしばらく家から離すって、どういうこと?」とラケルに尋ねる。ラケルは、「彼は収監されるべきよ、メルセデス」と言うが、カルメラは直ちに、「私の生徒で行動更生学校で終わった子はいないし、チャラは最初の1人にはならない」と、生意気なラケルに反論する。“何様のつもりだ?” と訊かれるに相応しいラケルは、自分より遥かに年上で経験豊富なカルメラに対し、「これは、あんた一人が決めることじゃない」と言い放つ。それに対しカルメラは、「クラスで何が起きるか決められなくなった日が、私の教師としての最後の日ですよ」と、決然と発言する(3枚目の写真)。

次の場面では、カルメラの一家が入院中のカミロ〔孫の1人?〕を残し、マイアミに移住することになり、空港に向かうタクシーに乗っている。カルメラは、途中でタクシーを停める。娘は、「母さん、2時間前に空港に着いていないといけないの」と声をかけるが、カルメラは、「心配しないで、すぐ終わるから」と言って、孫の男の子とタクシーから降り、「ここでお別れね」と言う。「空港まで来ないの?」。「こういう場所の方がいいの」。「僕、寂しいよ。学期が終わったら、僕たちと一緒になってね」。カミエラは孫を抱き締める。孫は、さらに、「カミロが退院したら…」と言い始めると、カミエラは 「あなたのおもちゃを渡すわ」と言う。娘が 「母ちゃん、どうやって帰るの?」と訊くと、カミエラは 「心配しないで。バスかタクシーに乗るわ」と言って、孫と娘を抱き締める。一方、アパートでは、役立たずのソーニャが、床に座ってラム酒(?)を飲んでいる(1枚目の写真、矢印)。チャラは鳩を飛ばしている(2枚目の写真)。そして、バスにもタクシーにも乗らずに歩いていたカルメラは、突然苦しくなって道路に膝をつき、そのままうつ伏せになって倒れる(3枚目の写真)。

翌朝、生徒達が騒いでいると、そこに2人の教師が入って来る。年上の教師は、「みんなが知っているように、カルメラ先生は心臓発作の療養のためしばらくお休みします。これはマルタ、みんなの新しい先生よ」と紹介する(1枚目の写真)。チャラは、隣のヨアンに 「セクシーだ」と囁き、イカシテルという時に吹く 「ピュ〜↑ピュ〜↓」という口笛を吹く。それを聞いたクラス中が笑い、年上の教師は 「チャラ、熱烈な歓迎ありがとう」と、半ば責めるように注意する。授業が終わると、チャラは、恐らく1つ年上の黒人の生徒ノノと薄い金属の輪で糸を切るゲームをしている(2枚目の写真、矢印は両者の金属の輪)。相手に糸を切られて負けたチャラは、ヨアンが持っていたキウイを、ノノの相棒のデブに渡す。

渡されたキウイに不満のデブは、チャラの教室に入って行く。チャラは、「何の用だ? もうすぐ授業だぞ。休み時間に校庭で待ってろ。教室まで来るな」と文句を言う。すると、不良のデブは、イェニが机の端に置いておいた赤色の小さな器具〔何かは不明、USBにも見える〕を、「おい、すごいクールだな! パレスチナ人のは最先端か?」と言いながら掠め取る〔ハバナでは、東部州の出身者を「パレスチナ人」と呼ぶ(偏見)〕。イェニは、「返してよ!」と怒る。チャラも、「おい、返せよ」とサポート。デブは、「おいおい、ビクビクすんな」とバカにし、イェニはイェニで、「チャラ、あたしは自分で守れるわ」と手出しを拒む。しかし、デブが、“器具” を紐に通して自分の首にかけるのを見たチャラは、「彼女に返せと言ってるんだ」と、再度警告する。デブが、「お前なんか怖くないぞ、“チック〔ヒヨコ〕”」と侮辱したので、それを聞いた途端、チックは “器具” を奪うと、デブを床に突き飛ばす。その時、何も知らずに、結果だけ見た新任の担任マルタが現われ、「何が起きてるの?!」と強い調子で訊き、デブには自分の教室に行くよう命じ、チックから “器具” を取り上げ、「お母さんに取りに来るよう伝えなさい」と言う。イェニはすぐに、「それ、あたしのです、先生」というが、マルタが返したかどうかは分からない。逆に、マルタは、ヨアンが机に置いた何かの上にさっと雑誌を置いて隠すのを目ざとく見つけて、雑誌を取り除く。「カードね」。そして、先ほどのイェニの発言は、嘘で、チャラを守るためだったと勝手に思い込んでいたので、今度は、「それもあなたのものなの、マリア・パウラ?」と、イェニの友達で、ヨアンが好きな女の子の名をなぜか挙げ、ヨアンには持ち帰らないよう注意する。ヨアンはカードをチャラに渡すと、「もう、カードは持ち込まないよ」と言うが、マリアは 「渡しなさい」と命じる。チャラは高圧的な態度に反発し、「何のために? それで母さんが取りに来てくれる?」と訊く。マリアは、「二度と繰り返しませんよ」と警告し(1枚目の写真)、チャラが、カードを渡さず自分のポケットに入れるのを見ると、校長室に連行する〔教師に成り立ての新米のため、何も分かってないのに、ただ単に厳しいだけ〕。校長は、「チャラ、何があったの?」と訊く(2枚目の写真)。ここから、チャラが雑然とした町並みを歩いていくシーンが続き、カルメラの辞職文の2回目の “読み上げ” が流れる。「私以上のことは誰にもできません。なぜなら、彼らは皆、心は男の子だからです。子供を形成するものは4つあります:家庭、学校、規律、愛情です。しかし、彼らがその枠を越えて外に出てしまうと、教師はそこに何が待っているのかを知る必要があります。以前は、私にとって人生はより明確でした、そして、生徒が何をしようとしているのかも分かっていました。でも、今、私にとって明確なのは、彼に何をさせてはいけないかということだけです」。

チャラは、いけ好かなくて生意気で迷惑なノノとデブをやっつけてやろうと、仲間2人と一緒に高架鉄道のレールまで登ると、レールの上にコインを置き、鉄の錘のようなもので何度も叩いて薄っぺらくする(1枚目の写真、矢印)。列車の車輪が均等に薄くしてくれるとは限らないので、3人で、できりだけ多くのコインをレールのあちこちに並べる(2枚目の写真)。列車が警笛を鳴らしても、最後まで作業を続けていたチャラは、轢かれる寸前に飛び降りる(3枚目の写真)。列車が通り過ぎると、高架橋の下には、より薄くなったコインがパラパラと落ちてきて、3人はその出来具合に満足する。

帰り道で、3人の前からイェニが歩いてくる。チェニは、イェニへの声かけがうまくいくかどうかで、2人と賭ける。3人とイェニの距離が縮まり、チャラがイェニの前に立ち塞がる。「ここで何をしているの?」。「君を待ってたんだ。ねえ、僕のガールフレンドになりたい?」(1枚目の写真)。「頭、おかしくなったの?」。「一人で歩かなくてもよくなるよ」。「一人でいるのが好きなの」。「イェニ、もし僕らが付き合えば、誰も君にちょっかい出さないよ」。「そうよね、あんた行動更生学校に入れられるような野蛮人だもん」。チャラは、自分の腕にはめていたブレスレットを外すと、「僕は、君が僕のガールフレンドになる方に賭けたんだ」と言って、ブレスレットを受け取るよう差し出す(2枚目の写真)。そして、返事がないまま、イェニのバッグに入れようとすると、彼女は 「チャラ、あんた “ノー” って言葉が理解できないの?」と言い、それでもチャラが頬にキスしようとすると、チャラの頬を引っ叩いて、さっさと去って行く。チャラはさっそく2人に冷やかされるが、賭けがどうなったのかは分からない。

次の場面では、動けるようになったカルメラが、買い物まではできないので、定職のないイェニの父パブロに頼んで買ってきてもらった野菜と交換にお金を渡している(1枚目の写真)。ここで、パブロとイェニの2人家族の状況について、「EL PAÍS」というサイトの記述を紹介しておこう。2人は、映画の中盤の会話からオルギン〔Holguín〕というキューバで4番目の人口の都市から来たことが分かるが、この都市は、キューバ島の東端近くにある〔ハバナは西端ではないが、島のかなり西寄り〕。「1960年代以降、ハバナへの移住のほとんどは東部地方からで、1990年代に最も多くなった。移住を規制するため、政府は首都への移動を許可制にし、ハバナの非居住者の雇用を制限するなど、さまざまな措置を講じた。これらの法律は差別的扱いを正当化し、東部からの移住者に対する社会的無視を無際限に継続させた。結果として、首都近郊に、劣悪な生活環境と、と基本的生活必需品へのアクセスが制限された違法居住地を生んだ。警察は身分証明書の提示を要求し、かつ、ハバナに無許可で居住している人物を拘束する権限を与えられた」。カルメラが、届けてもらった野菜を持ってアパートの階段を上りかけると、スルタンを連れたチャラが、「カルメラ!」と声をかける。振り返ったカルメラに、チャラが 「学校には いつ戻ってくるの?」と尋ねると、「まだ無理よ」という返事。「先生がいないから、大変なんだ」。しかし、それに対するカルメラの返事は全く別の視点。「その犬と一緒の時は、話しかけちゃダメだと言ったでしょ」。「この犬はおとなしいよ。運ぶの手伝うから」。「結構よ。それより、あなたに関する苦情なんか聞かせないでちょうだいね」。こう厳しく言った後で、後悔したのか、一旦上り始めて、「チャラ」と呼ぶ。そして、「私は、まだ一人で出かける勇気がない。でも、明日、カミロの様子を見に行きたいの」と、チャラの同行を要請する。チャラは、喜んで、「じゃあ、明日ね、先生」と言って出て行く。そして、病室を訪れたカルメラのワン・シーン(2枚目の写真)。簡単には治りそうにない、重い症状だ。病院の入口で待っていたチャラは、カミエラが出て来ると、「先生、どうだった?」と尋ねる(3枚目の写真)。「カミロは、重い病気なのよ、チャラ」。

再び学校で。チャラは先日の黒人ノノと、薄い金属の輪で糸を切るゲームを行う(1枚目の写真)。線路で苦労しただけあって、今度は、相手の糸を切ることに成功する。チャラは、「そっちの負けだ」と言い、賞品をもらおうと手を差し出す。ところが、卑怯なノノは、「渡す気なんかない」と言い出す。「なんだよ、この前、ちゃんと渡したろ」。ノノは、何か分からないが、小さな球型の果物(?)を渡す。チャラと2人の仲間が、それでOKして去って行こうとすると、ノノは、「おい、雪辱戦どうだ?」と声をかける。チャラは、「いいや、マンチキン、雪辱戦なしだ」と拒否する。その侮辱的な返事を聞いたノノは、「お前の仲間の1人を見ろよ。そいつ〔ヨアン〕の親爺が刑務所にいるって知らないのか?」と秘密をバラし、怒ったチャラは 「彼〔ヨアン〕の方が、お前なんかより男らしいぞ」と言うなり、顔を殴る(2枚目の写真、矢印は殴られて倒れていくノノの頭)。チャラは、倒れたノノに跨ると、さらに鉄拳を何度も叩き込む。男の教師と、マルタが2人を分ける。それを見ていた1人の女の子が 「彼〔チャラ〕ったら、いつもトラブルのね」と言うと、イェニは 「あんたに関係ないでしょ」とチャラを庇い、パウラは 「彼はヨアンを守りたかったのよ」と、さらに強く庇う。

アパートに戻ったチャラは、出かけようとしているソーニャに、学校であったことを話す。「新しい先生、すごくうるさいんだ」。「言ったじゃないの」。「僕にどうして欲しかったの? 僕は何も悪くない」。「そうでしょうとも」。「校長が、母さんに会いに来るって。ソーシャルワーカーも来るって言ってた」。「チャラ! あいつらとは二度と会いたくないって言わなかったかい?」。チャラは、渡した闘犬のお金がちゃんと使われたか心配なので、「支払い済ませた?」と訊くが(1枚目の写真、矢印はアルコール依存症の症状を軽くする薬)、返事はない。そこに、イグナシオはドアから入って来て、「入っていいかな?」とソーニャに訊く。「もう、入ってるじゃない」。チャラは、「あいつら 僕を行動更生学校に行かせるんだ。寄宿しないといけない。けど、犬はここに置いときたいんだ」と話す。「今度は、何をやらかした?」。「新しい先公がメッチャうるさくて」。「誰が犬の世話をする?」。チャラがリチャードとヨアンと言うと、イグナシオは断固拒絶。困ったチャラは、「お金、要るんだ。母さんを助けないと」とすがるように頼む。イグナシオは、「週末に、犬のために2倍の働くんだな」と言う(2枚目の写真)〔毎日の餌は、イグナシオがやりに来るのか?〕。その後で、イグナシオが、チャラの助けを借りて、スルタンを鍛える場面が入る(3枚目の写真、矢印のロープの先にスルタン)。

そこに、イェニがやって来る。チャラは猛犬と関わっているのを見られると嫌われると思い、彼女に鳩を見せる。しかし、イェニはチャラに会いに来たのではなく、チャラが別の学校に移るので、無理矢理バッグに入れられたブレスレットを返しに来ただけだった(1枚目の写真、矢印)。チャラはがっかりする。そのあと、アパートに戻ると、ソーニャは、いつものアル中で何もしない母と違い、新しい学校に行くための用意を珍しくきちんと行い、おまけに、彼が出て行く前に抱擁までする。行動更生学校に行くと、校長のカルロスが制服をきちんと着るよう指導するが(2枚目の写真)、それ以外は、これまで通っていた学校の新米教師マルタより、よほど自由な感じ。狭い校庭でサッカーごっこをしていて、ボールの取り合いで、チャラと、もう1人の生徒が喧嘩を始めるが、その激しさは、これまでの学校ではなかったもの〔チャラと違い、本当のワルもいる〕

一方、カルメラは体調がよくなったので、学校に行き、校長のメルセデスに明日から始めたいと告げる。そこに、代理を務めていたマルタが入って来て、2人は初めて顔を合わせる。そして、3人はそのまま教室に行く。久し振りにカルメラを見た生徒達は、カルメラに抱き着いて喜ぶ(1枚目の写真)〔これを見て、マルタも少しは反省したかもしれない〕。校長は、明日から、カルメラが人文科学、マルタが一般科学を教えると話す。それを聞いて、生徒達から拍手が起きる。カルメラは、チャラの席が空席なのに気付き、「チャラがいませんね」と言うと、すぐに、仲間のリチャードが、「はい、先生、チャラはいません」と教え、生徒達から、「ホントだよ」という声が一斉に上がる。そして、1人の女生徒が、「チャラは行かされたんです…」と言い始めると、校長がすぐに発言を止めさせ、「あとで、状況をお話しします」とカルメラに告げる(2枚目の写真)。すると、今度は、パウラが手を上げ、「先生、イェニもいません」と教える。それは、校長には初耳だったので、「イェニはどうしたの?」とマルタに訊く。「私は彼女に会いに行きました、メルセデス。あなたが部屋にいないときに彼らがこれを持ってきたので、彼女の父親を探すためにイェニを帰しました」。マルタは1枚の紙を校長に渡し、それを読んだ校長は、カルメラにも渡す。そして、場面は、イェニと父が暮らしている極貧の倉庫に変わり、父親が 荷台付きの三輪自転車を押しながら戻って来て、イェニが抱き着く。イェニは、先生から返されたと教える。「規律違反か何か?」。「査察よ。彼ら、あたしの登録番号が間違ってることに気づいたの」。「さあ、どうするかな、イェニ。もう カルメラと話すのが恥ずかしいんだ」。

カルメラは、行動更生学校に直行する。校長のカルロスは、カルメラの教え子の1人なので、カルメラの要請に応えてすぐにチャラを校長室に呼ぶ。カルメラは、チャラを行動更生学校に来させる直接原因となった学校でのトラブルについて尋ね、チャラは、ヨアンの父が悪たれノノによって侮辱された経緯を話す(1枚目の写真)。カルメラがチャラを部屋から出すと、カルロスは、①チャラが闘犬を飼育している、②母親や教師もチャラに対処できない、と話し始めるが、カルメラはそれを遮り、「悪いけど、カルロス、チャラの教師は私です。もし私が彼に対処できなければ、私は名前を削除します」と、きっぱり言う(2枚目の写真)。さらに、「チャラは母親の面倒を見ています。彼の家では、誰が食事の用意をしているか、知っていますか?」とも。カルロスは、①カルメラが休んでいる間のチャラの暴行、②子供が家事をすることの自体の不合理さ、を指摘した上で、校長のメルセデスから渡されたチャラの調書の内容のひどさを強調する。それに対しても、カルメラは、「その中に、私の書いたものは一つもありません。私は彼が4年の時から、彼の教師でした。私が全責任を負い、彼を連れて帰ります」と、主張する。カルロスは、市の委員会からの命令なので、「そんなことができないと、ご存じでしょう」と反対するが、カルメラは、「カルロス、あなたはチャラより優れていませんでした。どうか、この件は私に任せて、委員会に学校に来てもらって下さい」と、思い切ったことを言い(3枚目の写真)、問答無用でチャラを連れて帰る〔これほど素晴らしい教師はいない〕

カルメラはチャラを連れて行動更生学校から出ると、タクシーを拾う(1枚目の写真)。おんぼろタクシーに乗ると、カルメラはさっそく、「家に戻ったら、すべきことを言いますよ。手始めに、月曜までにすべてのノートを最新の状態にすること」。「職権乱用だよ」。「それに、あなたをチェックする人を見つけないと」。「自分でできるよ」。「そう? 犬がいるのに?」(2枚目の写真)。「それに、私はまだ無理するのを禁じられているので、用事を手伝って欲しいの」。「また乱用だ。それって、未成年者の乱用でしょ?」(3枚目の写真)。ここで、運転手が口を出す。「坊主、お祖母ちゃんの言うことは聞くんだ」。「おばあちゃんじゃないよ」。そう言った後で、チャラはカルメラを向いて、「そうだといいんだけど」と言う〔聞いていて、嬉しくなる言葉〕

チャラがアパートに入ると、母の寝室から妙な音がする。チャラがドアを開けて覗くと、ベッドの上で母とイグナシオがセックスの真っ最中。しかも、母は、首を動かしているうちに、チャラに見られていることに気付く(1枚目の写真)。目が合ったので、チャラはバタンとドアを閉める。ソーニャは、すぐに行為を止めるとチャラを追って上部階のベランダの行き、スルタンを撫でているチャラの脇に座り込むと、「逃げて来たの?」と訊く(2枚目の写真)。あんな行為を見た直後だったので、チャラは、立ち上がると、「そう思うの?」と言い返す。「チャラ、あたしをイライラさせたいの?」。「いつだってイライラしてるくせに」。それを聞いたソーニャは、チャラの頬を引っ叩き、怒ったチャラはアパートから出て行く。

カルメラがチャラを連れて出て行くと、カルロスはさっそく委員会に連絡する。すると、悪女ラケルと校長メルセデスがやって来る。カルロスが、「ラケル、あの子〔チャラ〕は、カルメラがいない所と、いる所では、ぜんぜん違うんだ」と実情を述べる。権威主義に凝り固まったラケルは、「あなたは、この学校への入学のさせ方を、誰よりよく知ってるハズよ」と、カルロスの曖昧な態度を批判する。メルセデスは、「カルメラはとても尊敬されていて、それが私たちには大きな問題なの」と言うが、ラケルは完全無視。カルロスが 「で、最終的に、どうなるんだね?」と訊くと、威張り腐った女は 「あの少年は(ここに)戻す。そしてカルメラに会わないと」と、判で押したような返事しかしない。ここで、翌日の早朝、チャラのアパートの部屋の中を上から撮った映像が入る(2枚目の写真)〔チャラの目覚ましが鳴っている〕。同じ頃、イェニを三輪車に乗せたパブロが、高架の下を走る(3枚目の写真、矢印)。そして、イェニに、「心配しないで、私から彼女〔カルメラ〕と話すから。問題は、今日の仕事がいつ終わるか分からないんだ」と話している。

翌朝、チャラは学校に行き、いつもの仲間2人に声をかけ歓迎される。しかし、すぐにマルタが寄って来て、「ここで何してるの?」と咎めるように訊く。その言い方にムッときたチャラは、「カルメラに訊けよ」とぶっきらぼうに答える(1枚目の写真)。今回の行動更生学校行きの原因となった悪たれノノが平然と学校にいるので、マルタ、メルセデスが事態を正確に把握しないまま、ラケルと結託してチャラを一方的に悪者にしたことが分かる。マルタはメルセデスに報告に行き、知らせる時間がなかったと言われると、マルタは、新米のくせに、生意気にも、「メルセデス、カルメラが戻ってきて 何でもやりたいようにする権利があるなら、私は不要ね」と両者を批判する。遅れて学校に来て、その言葉を耳に挟んだカルメラは、「ここでは、誰もが必要よ」と勘違いを是正する。それに対し、マルタは、「あの子の暮らしぶり、見たことあるの?」と、失礼極まりないことを言い出す。カルメラは、「あなたこそ、チャラの人生を知ってるの?」と、マルタが一瞬見ただけの荒っぽいチャラの、その背後にある “役立たずの母を支えて暮らすチャラの悲惨な人生” について問い質す。マルタは 「助けが必要な子」としか言わない〔この “助け” には、行動更生学校での再教育も含まれる〕。そこで、カルメラは、ある意味、逆襲に転じる。「イェニも助けが必要で、教室で一番の生徒よ。あなた、昨日、イェニを父親捜しに行かせたようだけど、それが彼女に何をしたか知ってるの?」と、何も知らずに表面だけ見て指示を出す新米の愚かさを糾弾する」(2枚目の写真)。「あの2人は、ハバナに住所なるものを持ってないのよ。オルギン出身だから」。ここで、マルタが、「チャラの話をしてたんじゃないの?」と口を挟むと、「イェニは今日来たの?」と訊く。マルタが否定すると、「なら、私たちで対処しないといけない」と言う。そして、場面はイェニの仮の住まいに変わり、カルメラとマルタが2人を訪れる。イェニの父パブロは、カルメラに、「先生、私はあらゆることを試しましたが、ハバナでは私たちを合法化する手段はありません」と話す。それに対し、カルメラは 「ここで、起きてはならないことは、イェニが学校を休むことです。明日は、学校に連れて来て下さい」と言う(3枚目の写真)。マルタはイェニに直接質問する。その中で、イェニは、学校が終わった後、いつも父を市場に迎えに行くと話した後で、「そうすれば父さんを守れます」と言う。マルタがその意味を尋ねると、イェニは 「私たちが一緒にいると、警察は決して父さんにちょっかいを出さないからです」と答える〔何という嫌な国だろう〕

翌日、カルメラが生徒達と楽しく授業をしていると、教室の外に呼ばれ、カミロが死亡したとの連絡が病院から入ったと知らされ、覚悟していたとはいえ、悲しみにくれる(1枚目の写真)。教室に戻ったカルメラにそのことを知らされた生徒達のうち女生徒は一様に悲しみ、特に、いつも目をかけられていたイェニは涙を流す。その後の会話で、イェニがこの学校に来た当時は、カミロはまだ学校にいて、「パレスチナ人」と呼ばれて疎外感に苦しんでいたイェニに、聖母マリアのカードをくれたことが分かるのだが、その時もらったカードを出すと、イェニは立ち上がって、教室の後ろの壁に掲示された「道徳」と書かれた板の右下隅にカードを挟む(2・3枚目の写真、矢印)。

その日の夜、チャラは、キッチン・テーブルに座ってノートを拡げると、勉強するのではなく、「イェニとチャラ」と何度も書いている。そこに、ソーニャが外出〔飲酒〕から帰ってくる(1枚目の写真)。チャラが 「何か食べる?」と訊くと、ソーニャのその場で崩れ落ちるように倒れる。チャラは、すぐに酔っ払いの介添えにまわり(2枚目の写真)、ベッドまで連れて行く。いつもと違って黒いサングラスをかけていたので、外すと右目の下が殴られたように腫れていた。

翌日、授業後、カルメラの教室でチャラについてカルメラがしたことを糾弾する会合が開かれる。教室に入って来た女性〔ミルタ(?)。職域不明〕 は、イェニが掲示板に挟んだ聖母マリアのカードを目ざとく見つけ、「これは何です?」と問題視する(1枚目の写真)〔なぜかは分からないが、宗教的なものを掲示してはいけないらしい。かつて、無神論者のカストロはキリスト教を弾圧したが、1996年に弾圧政策は放棄されている〕。カルメラは、「元に戻して」としか言わない。「でも、これは…」。「お願い」。傲慢なラケルは、自分の管轄でもないのに、「カルメラ、それが許されないことぐらい分かっているハズ」と文句をつける。カルメラは、「私にはできなくても、子供たちはできる」と反論し、それに対し、ラケルがぐだぐだ言い始めると、カルロスは、「あなたたちは、この会議の目的と関係ないことでもめている」と、暗に、ラケルを批判する。ラケルは、カルロスを見ながら、「彼をお宅に送るという決定は、この学校のファイルを基に、ソーシャルワーカー、部門責任者、この件を担当する心理学者が徹底的に検討して下されました」と言うと、カルメラを睨みつける(2枚目の写真)。この批判に対し、カルメラは、「彼は聖人ではないが、母親からは教わらなかった価値観や感情を持った子供なのよ」と、強く反論する。誤った資料を作った元凶のミルタ(?)〔突然説明なしに登場しても困る〕、「行動更生学校が、それを奪う訳ではないわ」と言い始めると、それを遮るように、カルメラは 「行動更生学校は、彼の人生における汚点になるわ。彼を疎外してしまう。私は、彼の母親の教師で、3年前から彼の教師だった。私以上に、彼のことを知ってる人なんていない」と主張する〔特に、ラケルとマルタは〕。ここで、ラケルが本音を剥き出しにする。「しかし、今回みたいな重大な決定を3週間後に撤回することなんてできない」。それに対し、カルメラも大したもので、「あんたは自己保身を考え、私はあの子の正当防衛を考えてる〔少し意訳した〕」と、ラケルの意図をあからさまに批判し、教室から出て行く。残されたラケルは、その後の処理を校長のメルセデスに押し付ける。

チャラが戻った授業風景をバックに(1枚目の写真)、カルメラの辞職文の3回目で最後の “読み上げ” が流れる。「どのクラスも違っていて、どのクラスにも永遠に記憶に残る子供達がいました。このクラスで、私は、自分の孫〔マイアミに移住した少年〕を教えました。その孫を含め、過去3年で、7人の生徒がキューバから出て行きました。うち1人は、マルティ〔スペインからのキューバの独立のために戦った革命家〕と祖国について話したのに、彼の家族はあらゆる手段を講じてスペインの市民権を取りました。これは、生徒達に死とは何かを教えたカミロのクラスでした。父親が政治上の問題で投獄されているヨアンのクラスで、パレスチナ人という十字架を背負った優秀な生徒イェニのクラスで、そしてなにより、チャラのクラスです。教室の壁に聖母マリアの小さなカードがありますが、カルメラが教師である限り、それを取り除くことのできる神はいません」。カルメラが、チャラとヨアンと一緒に自分のアパートに戻ってくると、ラケルが待っていた。彼女が来た目的は、最後の説得。判で押したように、「私は自分の仕事をしないと。残念ながら、チャラにとっての最良の選択肢は 行動更生学校よ」と言う。それに対し、カルメラも、「残念だけど、チャラに選択肢などないわよ、ラケル。イェニのような優秀な生徒にもね」と、一歩も譲らない。「カルメラ、彼女の登録には違反があり、あんたは初めからそれを知ってたんでしょ?」(2枚目の写真)。「正直に言いましょか? そんなことどうだっていいの。私にとって重要なのは、彼女のような少女にチャンスを与えること」。「カルメラ、これから どうなるの?」。「ラケル、それぞれが自分のすべき仕事をするだけよ」。

どうしようもないワルのノノは、チャラに負けたうっぷんを晴らしたいので、チャラをエントラーダ運河〔Canal de Entrada〕の海との接点に呼び出す。そして、次のシーンでは、勝手に走り出したノノが岸壁から運河に飛び込み、それを追ってチャラも飛び込み、対岸に向かって泳ぎ始める(1枚目の写真)〔最初から差がついているのは、汚い策略〕。しかし、泳ぎに慣れていないノノは、途中で息が続かなくなり、溺れそうになる。チャラはノノを助け(2枚目の写真)、対岸のモッロ要塞〔Castillo del Morro〕との中間に浮いているブイに向かって何とかノノを連れて行く〔ワルの面目丸つぶれ〕。そこに警備艇がやって来て2人とも乗せられる。結果として、チャラは、彼に目を付けているいつもの警官によって学校に連れて行かれる(3枚目の写真)〔警官は、チャラにこのようなことをさせたノノは家に連れて行っただけなのに、なぜ、チャラだけ学校まで連れて来たのだろう? 意図的な差別だ。これでは、チャラがますます “問題児” になってしまう〕。一足先にイェニが走って知らせに来たので、カルメラには用意ができていて、警官は、チャラをここに置いて帰るよう求める。しかし、運の悪いことに、警官が帰ろうとした時、ちょうどやってきたラケルと会い、チャラのことを言いつける。それを見たカルメラは、「一体なに考えてるの?」と怒る。チャラは、「学校でやったんじゃないよ」と弁解する。「だから何?」。「あいつ、わざと学校まで連れて来たんだ。先生にこんなトコ見られたくないのに」。「家に帰って待ってなさい。お母さんに、話があるって言うのよ」。

チャラはアパートに帰ると、母にカルメラが会いに来ると伝えても、ソーニャは出かける用意を始める。チャラが止めても、「カルメラとは、これ以上もめたくないの」と言うと、戸棚から取り出した薬を、コップの水で飲む(1枚目の写真、矢印)。「そんな姿、見られたくないからだろ?」。ソーニャは何も言わずに出て行く。腹を立てたチャラは、テーブルの上に置きっ放しになっていた薬の小瓶を持つと、屋上に行き、置いてあったポリ容器の中に隠す。チャラがキッチンの床の割れたガラス片を掃除していると、カルメラと一緒にやって来たマルタが 「手伝うわ」と言うと、もうほとんど終わっていたチャラは断る(2枚目の写真)。カルメラが 「お母さんはどこ?」と訊くと、チャラが答える前に開いているドアがノックされ、イグナシオが犬を連れて入って来る。思わぬ人がいたので、イグナシオは 「調子はどうですか?」と、心臓発作について尋ねる。カルメラに、ソーニャの居場所について尋ねられたイグナシオは、「今日は見てません」と答えると、「チャラ、後で連れて来るよ」と言って犬を連れて帰ろうとする。カルメラは、部屋を出て行ったイグナシオを呼び止め、「チャラを助けてくれないかしら」と頼むが、イグナシオは 「チャラは、俺の問題じゃない」と断る。カルメラは、「そう思ってる人ばかり。彼の母親ですら、そうなんだから」と、チャラの境遇を語る。イグナシオは、「この家じゃ、俺がチャラに払う金で食べている」と話す(3枚目の写真)。それに対し、カルメラが 「あなた、闘犬は子供に相応しいと思う?」と訊くと、イグナシオは 「犬の方がもっとひどい〔いつ、相手に噛み殺されてもおかしくない〕。食べさせてはもらえるが」と答える。

イグナシオがいなくなると、代わりにチャラが廊下に出て来る。カルメラは、「許してね、チャラ。あなたをよく叩いたわね」と言って謝る(1枚目の写真)。「それって、何度も僕をつねったり、定規で叩いたりしたこと?」。「でも、それは、私にとっても辛いことだったのよ」。「僕って、先生を困らせてばかりだから」。「病院まで私に会いにきてくれた、唯一人の生徒は誰だったかしら?」。そう言うと、カルメラは、チャラを抱き締める。そして、「チャラ、私を助けて、でないと2人とも大変なことになるわ」と言う。2人の教師がいなくなると、チャラは、屋上に行くと考え込む(3枚目の写真)。

翌日の教室で、休憩時間が終わると、カルメラは、「休憩時間中に、みなさんは、秘密のお友だちのイスの下に贈り物を置きましたね」と言い(1枚目の写真)、贈り物を見るのは授業時間後にしようと思っていたが、生徒の顔を見ると、2分後に見ていいことにしたと告げ、喝采を浴びる。イェニの紙には、「学校を出たら、バックパックの中を見て」と書いてあった。いつものように、イェニはパウラと一緒に学校から出て行く。チャラと2人の仲間は、その後を、見つからないように付けていく。そして、イェニが待ちきれなくて、どこかのアパートの階段に座って、真っ赤な踊り扇子を取り出し喜ぶのを見て(2枚目の写真、矢印)、満足する。そこに、政治犯のヨアンの父が解放されて出て来たので、喜びは二倍になる。

学校で、重要な会議が開かれる。ここで、顧問という役名の年配の男性が登場するが、会議を牛耳っているのはあくまで悪の権化のラケルなので、何のためにいるのか全く分からない。顧問:「皆さん、私たちは最も長く勤務し、考慮に入れるべき品位を持った教師について話しとしましょう」。ラケル:「そのために、この会議の開催したのです」。ミルタ:「カルメラは10年ほど前に引退していてもおかしくなかったし、この前の心臓発作はかなり深刻だった」〔ラケルの次に悪い女性〕。ラケル:「私たちが同じ考えであるかどうかは分からないけど、カルメラが受けるに値する尊敬を認めた上で、引退も選択肢の一つだと思うわ」(1枚目の写真)。カルロス:「この中で、私たちのうち二人がカルメラの生徒だった」。ラケル:「失礼、それが、ここでの議論と何の関係が?」。カルロス:「彼女のような教師がいたから、教師を天職とする人間が生まれたんだ。いいかね、私の背がこのテーブルより低かった頃から、私はカルメラを知っていて、彼女は今でも当時と同じくらい有能だと保証する」(2枚目の写真)。ラケル:「本題に入って!」。カルロス:「私はカルメラが引退勧告に該当するとは思わない。だから、それがこの会議の目的なら、私は断固として受け入れない」。ラケル:「カルロス、会議の目的は、“模範的な教育者でありながら、何年も独断で行動してきた教師” に適切な対処法を見つけることよ」。カルロス:「自ら判断して行動しない教師は、子供たちにバカにされるだけだ」。ラケル:「カルロス、もう十分よ!」。顧問:「ここでの議論の目的は、“経験豊富な教育者をどう教室に戻すか” だということを見失わないように」。ラケル:「カルメラだから、また 見て見ぬふりをすると、委員会が教室の壁に宗教的な絵はどうなるの?」。メルセデスは、「悪いけど、カルメラがこの場にいないのに、このような話を続けたくないわ」と言うと、席を立って出て行く。ラケルは、「ちょっと失礼」と他のメンバーに言うと、部屋を出てメルセデスを追って行く。ラケル:「メルセデス、カルメラとの合意の可能性がゼロじゃなかったら、私は決してこの会議を開催しなかった」。メルセデス:「私はこんな会議に加わりたくないのよ、ラケル」。ラケル:「他に、いい案でも? カルメラはあなたの先生だった。だから、私が介入しなければならないのは、あなたに問題解決能力がなかったからよ」。個々の登場人物の人柄がよく分かる重要な会議なので、長くなるが全訳した。

場面は変わり、チャラとヨアン、イェニとパウラが正方形のテーブルに資料を置いて勉強しながら遊んでいる(1枚目の写真)〔キューバ風スペイン語の断片の寄せ集めを理解することは不可能〕。そのうち、チャラに配慮したヨアンがパウラを誘ってベランダに出て行き、チャラはイェニと2人きりになる。チャラはさっそく、「君ってきれいだね」と言い、チャラは、「同じことばかり言って、よく疲れないわね」とはぐらかす。「僕が言うのに疲れたら、悲しくなって死んじゃうよ」。「秘密の友達、誰だか知ってる?」。チャラは、自分だといいなと思いつつ、首を横に振る。イェニの答えは、「クラスで一番字の下手な子」。イェニの秘密の友達が自分だと分かると、嬉しくなったチャラは、「君は、世界で最もきれいなフラメンコのダンサーだ」と言い、イェニの手を触ってみる(2枚目の写真)。それでも嫌がられずに、かえって微笑んでくれたので、チャラは嬉しくなる。

そこに、ヨアンが飛び込んできて、上の闘犬場で大変なことが起きていると知らせる〔ここで、闘犬は、チャラが犬を飼っていた場所の内部で開かれていたことが初めて分かる。それに、犬はイグナシオの物で、チャラは単に餌やりの世話をしていただけあることも〕。4人は闘犬をやっているフロア直下の階段まで行くが、闘犬のような残虐なものを見ることを拒んだイェニは、パウラと一緒に降りて行ってしまい、チャラも後を追う。しかし、闘犬場で闘っていたのは、チャラが一番大切にしていたスルタンだったので、ヨアンは階段から試合の様子を盗み見していて〔子供は立入禁止〕、スルタンが相手の犬に噛み殺されそうになっていることに気付く(1枚目の写真、矢印はスルタン)。そこで、急いでチャラを呼びに行き、2人が会場に戻ると、もう試合は終わり、スルタンの死骸が布を被せられて撤去されるトコだった。それを見たチャラは、イグナシオに 「よくもスルタンを殺したな! こんなに試合させるべきじゃなかった!」と喰ってかかる(2枚目の写真)。イグナシオは、「チャラ、冷静になるんだ。俺は、スルタンを弱い犬と闘わせ、名を上げさせたんだ。そしたら、誰もがスルタンに賭けるだろ。だが、俺はスルタンを最強の奴と闘わせ、そっちに賭けたんだ。分かるな?」と言うと、賭けで儲けたお金の一部をチャラの渡そうとする。しかし、チャラは、生活費になる貴重なお金を、イグナシオの手から叩き落とすと、唾を吐いて階段を走り降りて行く。

その頃、アパートでは、ソーニャが薬の小瓶を捜して、あちこちひっくり返していた(1枚目の写真、矢印は缶の蓋)。そこに、チャラが帰ってくる。ソーニャは、小瓶がどこにあるか必死になってチャラに訊くが、チャラは 「医者に行けよ!」と怒鳴り、ソーニャも 「あたしがどうすべきか、誰がお前に指図しろと言った?!」と怒鳴り返す。「僕には、その権利がある!!」。怒ったソーニャは外に出て行く。チャラが、その日か次の日、学校を終えて屋上で “授業中にイェニからカルメラを通じて渡された『白い牙』〔狼の血を引く子犬が闘犬の王者となるが、瀕死の重傷を負った後、忠義心のある犬に変容する〕” を読んでいると、そこにイグナシオがいつもの警官を連れてくる。それは、恐らく、そこかで意識を失って倒れていたソーニャが、病院に入院させられたから。チャラは ソーニャに会いに病院まで行く(2枚目の写真)。

夜になり、チャラはカルメラの家に行き、「今晩、停めてもらえません?」と頼む(1枚目の写真)。カルメラはチャラを抱き締める。一方、イェニの粗末なキッチンでは、夜になっても父が帰ってこないので、一人寂しく夕飯を食べている(2枚目の写真)。翌朝、カルメラの家ではチャラが起きて来ないので、授業に間に合うよう起こそうとするが、病院に持って行く物があるので学校には行けないと言う。そこで、親切なカルメラは、一緒に病院に行き、それから学校に向かうので、急ぐよう指示する(3枚目の写真)。出かける用意をしていると、ノックがあり、イグナシオが入って来ると、チャラにソーニャのことを訊く。チャラは、このまま入院すると答え、カルメラは一週間不在だと伝える〔なぜ、イグナシオはカルメラの家に来たのだろう?〕。ちょうどいい機会なので、カルメラは、二度目にチャラを援助するようイグナシオを説得しようとするが、同じ理由で断られる。一方、学校の前でカルメラが来るのを待っていたイェニは、警察から釈放された父と路上で会うことができホッとする。その時、警官がマルタに話したことは、①警察署は 丸一日パブロを拘留した。②彼は これまで何度も警告を受けている。③彼は オルギンに戻ることに同意した〔もちろん、イェニも一緒〕

マルタの一般科学の授業中、他の生徒がマルタの出した問いに答えていると、それを無視してパウラがイェニに何事か話している。それに気付いたマルタは、「何を話してるのか教えてくれない?」と訊く。すると、イェニは、「カルメラが引退させられるというのは本当ですか?」と質問する。生徒達も驚くが、マルタも驚く。「誰から聞いたの?」。すると、パウラが、「トイレに行ったら、掃除のおばさんたちが話してるのを聞いたんです。カルメラ先生が辞めさせられようとしてるって」。チャラが、「どうして?」と訊くと、パウラは、「壁の聖母マリアのカードのせい。それに、先生があなたを 行動更生学校から戻したから」(1枚目の写真)。それを聞いたイェニは、席を立つと、教室の後ろの壁の掲示板の右下隅に挟んでおいたカードを外す(2枚目の写真、矢印)。そして、翌朝、チャラは行動更生学校に行く仕度をし、アパートから出ると、前で待っていたイェニをアパートの入口に連れ込む。カルメラのために行動更生学校に行くことに決心したチャラに対し、イェニは一瞬のキスで感謝を伝える。そして、5人はいつものように学校に向かって歩き始めるが(3枚目の写真、矢印はチャラ)、途中でチャラだけは別の方角に別れて行く。

しかし、カルロスはチャラを校長室に連れて行くと、「君は、私に何を証明したか分かるかい? カルメラの言ったことは正しかった。ここは君のいる場所じゃない」と話す。チャラが、「でも、僕のせいで引退させられちゃう」と言うと(1枚目の写真)、カルロスは 「私の意見を話してあげよう。君がこのドアを出て行った瞬間から、君はいい子になるんだ。それでカルメラは満足する」と言う。「でも、それでどうなるんです?」。「それは君次第だ。どうなるかは分からない」。そう答えると、カルロスは立ち上がり、握手を求める。しばらく迷った末、チャラも立ち上がり、握手する(2枚目の写真)。

チャラも加わった授業の時間に、カルメラは、「イェニ、あなたは、なぜ掲示板に聖母マリアを貼ったのか覚えてる?」と訊き、イェニが頷く。カルメラは、さらに、生徒全員に 「それを見て、何か問題があると思った人はいる?」と訊き、生徒達は否定する。「それで、何が起きたの?」。チャラ:「パウラがトイレで聞いたこと」。「だから、あなたは出頭したのね」。チャラ:「先生、あなたがホントに引退するのか、まだ話してくれてませんね」(1枚目の写真)。「彼らは、私の健康を心配してるのよ。それに、私が留守にした3ヶ月の間、何も問題なく上手く行ったじゃない」。イェニ:「先生、掲示板にあるカードに何か問題がありますか?」。「すべてのことに理由があるのよ、イェニ。このことは、他の機会に話し合いましょう。でも、今、私にとって最も大事なことは、あなた達が、すべてはあるべき姿だと感じることです」。そう言うと、カルメラは、イェニから聖母マリアのカードを受け取ると、それを元通り、掲示板の右下隅に入れる(2枚目の写真、矢印)。

チャラがアパートに戻ると、母が戻って来ていて、しかも、ラム酒(?)を半分も飲んでいる。それでは、いくら 「お母さんを抱き締めて」と言われても、呆れ返るしかない。「頑張ってるんだけど、すごく難しいの」(1枚目の写真、矢印)。それを聞いたチャラは、「こんなゴミは、外に出さないと」と言って、ラム酒のビンをひったくる。ソーニャがベッドに横になりに行くと、チャラは、「明日、また病院に行くんだよ」と言い、「お母さんに、こうしろああしと、言わないで」と言われたにも関わらず、顔中にキスをする(2枚目の写真)。そして、ラム酒の瓶を持つと、屋上まで行き、中身を捨てる(3枚目の写真、矢印)。小瓶に入った薬も捨てる。

イグナシオが、チャラに預けておいた犬を連れ去ろうとすると、チャラは、「次の闘犬で殺すの?」と皮肉を込めて訊くと(1枚目の写真、矢印の先に犬)、イグナシオは、「俺が持ってる物はお前にやる。それしか俺にはできん」と言う。すると、チャラは、「僕を胴元にしてよ。算数は得意だし、子供なら誰も疑わないよ」と言い出す。それを聞いたイグナシオは、「いいか、よく聞くんだ。もし、このことを、あと一度でも言おうものなら、すぐにカルメラに会いに行き、お前を 行動更生学校にぶち込んでやる」。チャラが 「母さんを助けないと」と言うと、イグナシオは 「何か考えてみよう。ただし、賭け事や犬とは無関係だ」と答える。その次に、チャラは微妙なことを訊く。「ホントのこと言って。あなた、僕の父さん?」〔いつか、母とセックスしていたから〕。「誓って、そうじゃない」(2枚目の写真)。

一方、操車場で会ったチャラとイェニは、イェニが父と一緒にオルギンに帰ってしまうので、別れを悲しむ(1・2枚目の写真)。

カルメラの引退を記念して開かれた集会。そこには、カルメラの教え子達も何人か招かれている。少し遅刻して部屋に入って来たカルメラは、ラケルに対し、皮肉を込めて、「私があなたの苦労にどれほど感謝しているか、あなたは知らないでしょう」と言った後で、「書いたものを少し持って来ました。よろしければ、これを私流にやらせて頂くわ」と付け加え、正面の席に座る。そして、「幾つかの点では、もっとよく考えるべきだったかもしれませんが、これが私の感じたことです」と言うと、眼鏡をかけ、タイプで打った文章を読み始める。文章のほとんどは、映画の冒頭と、途中2ヶ所で読み上げられているので、映画では、最後の部分の読み上げが紹介される(1枚目の写真、矢印はカルメラ)。「一線を越えてしまったことは分かっていますが、これが私の良心に平安をもたらす唯一の方法でした。あなた〔ラケル〕がそうと決めたら、カルメラは去りますが、マルタは残ります。マルタ、私はあなたに言いたいことはただ一つ。あなたはとてもよく学びました。これから何年も経てば、あなたは “はしごを登れなくなった日に引退するこの老婆” より優れた教師になるでしょう。私は解雇されねばなりません。これが引退の挨拶です」(1枚目の写真)。ここで、カルロスが、鞄から封筒を取り出し、「これを付け加えて下さい。これはチャラの件についての私の意見です」と言う(2枚目の写真、矢印)〔未熟で愚かなラケルの判断に対する批判〕。チャラが嫌いなラケルは、話をイェニに持って行く。「オルギンから来た女の子の件も、何とかしないといけませんね」。これに対し、マルタも堂々と、ラケルの考えを無視する。「ラケル、その必要はありません。イェニと父親は自分たちの州に戻らねばなりません」(3枚目の写真)。それでも、ラケルはくどくど続ける。「彼女がどんな生徒なのか知っているので残念ね。私は彼女のためなら間違ったことをしてもいいと思ったのに」〔チャラに対する態度と正反対〕。そして、こともあろうに、カルメラに、「聖母のカードはどうするの、カルメラ?」と尋ねる。そのあまりの愚かさに、カルメラは、「あなたは何も分かってない。そうよね?」と軽蔑するように睨みつけると、それ以上何も言わず、席を立ってさっさと出て行く。

カルメラが、家に向かって歩いている。するち、操車場からアパートに向かうチャラが反対側から歩いてくる(1枚目の写真)。カルメラに気付いたチャラが、「カルメーラ!」と叫ぶと、チャラに気付いたカルメラの厳しい顔が綻ぶ(2枚目の写真)。

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